鋼鉄が見るアルデンヌの幻想
夢は過ぎ去る、しかしそれでも
『ウェイブ・オブ・テラー』はどちらのサイドを担当しても意義ある時を過ごせる作品に仕上がっている。だが、ある意味で最も歴史に近づこうとしている作品でもある。
これまではバルジを扱ったどの作品でも、ドイツ軍側が強すぎるきらいがあった。だがドイツ軍は、ドイツ装甲部隊は、本当にシミュレイションゲームで表現される程に強力だったのだろうか。
あのドイツ装甲部隊の強さは、結局ヒトラーが夢想した強さに過ぎないのではないだろうか。それは、誰もが勝負はついたと考えていた当時の西部戦線で、まだ勝負はついていない、まだチャンスはある、この大博打に勝てば状況は覆せる、と夢想したあの男が、幻想の中で見た強さだ。目標アントワープという壮大な作戦構想があったからには、ドイツ軍にはそれを裏付ける強さがあったのだと、あの男の幻想に引きずられるように今までデザインされてきたのではないだろうか。
『ウェイブ・オブ・テラー』は、事実を受け入れる勇気を要求するだろう。夢は過ぎ去る。しかしそれでも、いやそれだからこそ、人は挫けるようにはできていない。これはバルジのシミュレイションに新たな視点を与えた素晴らしい作品なのだ。
(鹿内 靖 ゲームレビューより)

ウェイブ・オブ・テラー:バルジの戦い
Wave of Terror:Battle of the Bulge (ジョン・デッシュ)
1944年12月16日、西部戦線でドイツ軍が行った大攻勢「ラインの守り」作戦を扱った作戦級ゲーム『ウェイブ・オブ・テラー』が装いも新たに「ザ・ベスト」版で登場!
フルマップ2枚、カウンター840個のビッグ・ゲームですが、プレイアビリティを向上させるためにマップやユニットのデザインを見直す他、ゲーム・バランスを調整するとともに、プレイに緊張感を加えるルール改訂も行われています。
ドイツ軍は史実同様に悪路と補給状態に悩まされるでしょう。移動と戦闘のどちらを先に行うか選べるルールによって、進撃を優先するのか、撃破を優先するのかの状況判断が求められます。
対する連合軍もドイツ軍の攻撃重点を見越し、空間と時間を天秤にかけながら増援の到着を見越してバランスよく守る必要があります。
果たしてドイツ軍にアルデンヌの森を走破できる力はあるか? 「奇襲」はそれをもたらすのか!? プレイして確かめてみてください。

COMPONENT
◇ ルール 16頁 | ◇ A1判マップ 2枚 | ◇ カウンターシート 3枚(12.5mm角) |